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私たちの体の約60%を構成する水。生命維持のために欠かせない資源でありながら、一方で生活用水、工業用水などさまざまな用途でも欠かせません。用途や役割に応じて、適切な水質を保つ必要があり、そのために重要となるのが水質分析です。

オザワ科学では水質分析に必要な分析装置を多数取り揃えながら、技術サポートによる綿密な支援を添えて、お客様の水質管理を支えています。

Index 目次

    1.水質分析とは?

    水質分析では、水の中に含まれる成分を分析によって明らかにします。

    飲料水や井戸水など、体に取り込むために分析する「飲料水分析」、生活や農工業などで使った後の水で自然を汚さないための「排水分析」、河川などの水が汚染されていないか分析する「環境水分析」なども水質分析です。

    このように、水質分析はとても広い分野で行われていて、私たちにとって身近な存在と言えるでしょう。

    <水質分析の例>

    • 飲料水分析

    毎日の生活に欠かせない飲料水が、水道法による水質基準に適合しているかを確認します。食品製造に使用する水や、ミネラルウォーター類の製造においても水質分析は欠かせません。

    • 排水分析

    工場や事業所から排出する水が、水質汚濁防止法や下水道法による排水基準を守られているかを確認します。都道府県の条例によりさらに厳しい基準が設けられていることもあるため、正確な水質分析が必要です。

    • 環境水分析

    河川や湖沼、海、地下水などの水質を分析し、人の健康に影響がないか、生活環境が安全に保たれるかを確認します。環境水はやがて、飲料水や生活用水、農業用水となるため、良好な水質を保たなければなりません。

    水質分析が行われるシーンとは?

    私たちは生活する上で、水を欠かすことはできません。

    水の利用シーンを思い浮かべてみてください。生活面では、飲む、料理に使う、洗う、お風呂につかる、プールを楽しむ、植木に水をやるなどが思い出されるかもしれません。またビジネスシーンでは、製品の原料にする、洗浄する、冷却するなどが挙げられるでしょう。

    どんな水でも良いわけではなく、身体に安全に、環境への負荷を低減しながら使うためには、水質分析が常に必要になるのです。

    <水質分析が行われるシーン>

    • 理化学試験

    水はすべての試験の基礎と言われており、再現性のよい試験を行う為には、水に含まれる不純物(固形物や塩類など)を取り除いた、化学式H2Oに近づけた高純度の水(純水/超純水)が求められます。

    純水/超純水にはJIS等の規格があり、さまざまな試験ごとに適した水質の純水/超純水を用いることが重要です。常に用いた水質が適切かどうかを確認するために、水質分析で適合状況を調べたり、比抵抗値/導電率、TOC値を表示出来る純水/超純水製造装置を使用したりします。

    • プール

    学校の水泳プールは文部科学省の「学校環境衛生基準」、レジャー施設などの遊泳用プールは厚生労働省の「遊泳用プールの衛生基準」が定められており、水質分析で塩素やpH値、大腸菌などの細菌を調べます。

    • HACCP(ハサップ)

    HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、危害要因を除去・低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法のこと。

    例えば厚生労働省の食品製造におけるHACCP入門のための手引書(清涼飲料編)には、「水道水以外の水を使用する場合は水質検査を年に1回以上行い、成績書は1年以上保管しましょう」とあり、水質分析が欠かせません。

    • 上下水道

    自治体の上下水道局では、定期的に水道原水や水道水、下水の分析を行いながら24時間体制で監視しています。検査結果はホームページなどで公開され、私たちも基準値に適した水を安心して利用することができます。

    水質分析の測定方法

    水質分析の測定は大きく2種類あります。

    1つはサンプルを採取してラボで試験する方法、もう1つはサンプルがある現場で直接分析する方法です。

    例えばpHの分析の場合は、ラボ据え置き型と、フィールドで測定しやすいポータブル型が活用できますが、分析項目によっては、現場で直接分析することができない場合もあるので注意が必要です。

    またサンプル採取の際は、分析項目によってガラス製やポリエチレン製などを使い分け、余分なものが入らないよう注意して採取し、できる限り早くラボに持ち帰る必要があります。

    2.水質分析で行われる代表的な手法や分析装置

    水質分析で実施される代表的な分析手法や装置についてご紹介します。

    ここで取り上げるイオンクロマトグラフ、pH計、超純水製造装置のほかにも、溶液の電気の伝わりやすさ(にくさ)を示す導電率計/比抵抗計、水中に溶解している酸素の量を調べる溶存酸素計、水中の有機体炭素量を分析するTOC計などがあります。

    イオンクロマトグラフ

    水溶液中でイオンとして存在している物質を分離定量する方法をイオンクロマトグラフィーと言い、その分析装置がイオンクロマトグラフと呼ばれています。

    イオンクロマトグラフでは、導入された試料をカラムに充填されたイオン交換樹脂によってイオン成分を分離し、検出器で成分の定量を行います。

    主に溶液中の無機の陰イオンと陽イオンの分析ができるほか、有機酸、アミン、糖なども測れるため、自動車分野、化学工業、医薬品、食品分野の品質検査、環境測定など幅広い分野で活用されています。

    イオンクロマトグラフの代表的なものとしては、サーモフィッシャーサイエンティフィックの「Dionex Integrion HPICシステム」があります。

     pH計

    pH計は水溶液の酸性~アルカリ性の程度を測る分析装置で、水溶液中の水素イオン濃度をpH1~14で表示します。試験室での試薬調製をはじめ、工場の工程管理や排水管理、河川や地下水などの環境水分析のほか、農業における土壌分析などに使用されることもあります。

    ガラス電極によるpH分析では、pHガラス電極と比較電極の2本の電極を用い、2つの電極の電位差を分析することで、溶液のpHを知ることができます。

    pH計は体温計ぐらいのコンパクトなものから、ラボなどで使用するラボ据え置き型までさまざまな種類があり、一般的にサイズが大きいものほど高機能で高精度での分析が可能です。

    pH計の代表的なものとしては、堀場アドバンスドテクノの「F-72」「LAQUA PH-SE」や「コンパクトpHメータ LAQUAtwin」、メトラー・トレドの「卓上型pHメーター(セブンコンパクト)」などがあります。

    最近のトレンドとしては、自動化・省人化に取り組まれているお客様が多く、pH分析の業務効率をアップする為にオートサンプラーの導入を検討されるケースが増えています。

    純水/超純水製造装置

    純水や超純水は、水質要求の高まりにより、最近ではTOC(全有機体炭素)表記の有機物量も指標として定義づけられるようになりました。

    水には無機物、有機物、微粒子、微生物といった不純物が含まれていますが、半導体や液晶パネルの製造や、実験で使用するためには、非常に厳しい規格の下で、水道水から純水、そして超純水を精製する必要があります。

    純水/超純水製造装置は、フィルターや導電率センサー、逆浸透膜(RO膜)、イオン交換樹脂、有機物酸化、殺菌用紫外線ランプなどが内蔵され、水道水を通すことで純水や超純水を精製することができる装置です。

    純水/超純水製造装置の代表的なものとしては、メルクの「IQ7000」や「EQ7000」などがあります。

    3.水質分析の導入例と注意点

    最近は分析装置の高感度化にともない、各種試験で使用する水は、高品質な純水や超純水が求められており、「試験に用いる水」の特性について理解を深める必要があります。

    試験に適する水質は、「分析したい成分が含まれていないこと」が重要です。万が一、試薬調製などに用いる水に対象成分が含まれていると、試料に含まれる目的成分の量が分からなくなってしまうからです。

    しかしながら、残念なことに適切な水質を選定されていないケースも見られます。高度な分析装置を導入されても意味がないものになってしまうため、装置の適切な使い方とともに、分析前と後の流れも知見のあるスタッフにご相談ください。

    また、純水/超純水を使用する際に以下の点に気を付けると、再現性がよい試験に繋がります。

    <純水/超純水を使用する際のポイント>

    • 使用する直前に採水し、すぐに使用する

    純水/超純水はとても汚染されやすい物質であるため、採水後はできるだけ早く使用することで分析装置でのバックグラウンドノイズや未知ピーク(定性できないピーク)を低減できます。

    洗びんを使用する場合も、こまめな入れ替えが必要です。

    • 泡立てないように静かに容器に流し込む

    泡立ててしまうと、空気と攪拌することと同じになり、不純物が混入するリスクが高まります。

    • 水を受ける容器は適切な材質を選定する

    分析したい目的成分に合わせ、無機イオンの分析の場合は樹脂製を、有機物分析の場合はガラス製を使用すると、容器からの溶出のリスクを回避できます。

    • 水を受ける容器は純水/超純水専用として使用する

    容器に試薬や試料の残渣があると、その成分が分析に影響を及ぼすためです。

    • バッチで、純水/超純水の導電率/比抵抗値を測る場合は、水を流しながら測定する

    純水、超純水を汲み置きで使用することは、溶媒としての能力が高いことから困難です。容器内に同じ水が滞留しないように流すことで、不純物が混入するリスクを軽減できます。

    水質分析の業界トレンド

    水道水の水質分析で、私たちの健康に影響を及ぼすとされる消毒副生成物で発がん性のあるハロ酢酸の9種類が特定されています。日本では3種類について基準値が設定されていますが、米国環境保護庁では5種類が規制されており、残りは規制外汚染物質モニタリング規則4リストとして、公共水道システムのモニタリング対象となっています。

    日本でも検討が進められていますが、現在の位置づけとしては「予防的見地から、ハロ酢酸類の低減化対策を進めるのが望ましい」とされています。

    このハロ酢酸の分析では、現在日本では「ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)」と「液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)」が公定法で使用を認められていますが、アメリカやイギリスではかなり前から「イオンクロマトグラフィー質量分析法(IC-MS)」が採用されています。

    近年はカーボンニュートラルへの取り組みが必須であり、その一環として、温室効果ガスの大きな要因であるCO2を回収し、合成されたメタンガスを都市ガスとして循環利用するメタネーションという仕組みが注目を集めています。

    メタネーションにおいて、メタンガスを合成するプロセスで発生するアンモニア、アミン類は環境や人体への負荷が高く、合成する装置自身の劣化にもつながるため、「イオンクロマトグラフィー質量分析法(IC-MS)」のニーズは今後高まることが予想されます。

    4.まとめ

    オザワ科学では、技術本部の充実したサポート体制でお客様をサポートいたします。

    ビフォアーセールス(BS)課は、技術サポートからお客様の水質分析のニーズに対応した提案をいたします。
    アフターサービス(AS)課は、主要取扱メーカー製品のメンテナンスサービスを提供いたします。

    私たちにとって身近で、欠かすことのできない水質分析。オザワ科学が分析前後も含めたトータルソリューションでサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

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