工場の生産設備にはさまざまな計器が付いています。その計測対象は、温度・圧力・流量など多岐に渡っており、生産条件や品質・安全管理・オートメーション化に欠かすことができません。
ものづくりの現場では、少子高齢化による人手不足や各種規格/測定管理の厳格化などへの対応が求められています。そんな中、IoTやセンサーなどを活用した工業計器の見直しは、省人化や安全性の向上など、現場が抱えるさまざまな課題解決の一手となるはずです。
オザワ科学では、現場の見える化・省人化対策、トレンド情報や測定ソリューション提案で、お客様のものづくりをサポートしています。
1.工業計器とは?
工業計器とは、工場の設備や生産工程、ものづくりに関連する計測機器の総称です。
<工業計器の例>
・温湿度計測…材料や製品の温度/水分量、装置から室内環境まで品質、安全管理など目的は幅広い
・圧力計測…圧力測定し状態の異常検知、設備装置への影響可否の指標に計測。正圧~負圧領域まで測定ニーズがあります。
・電流/電圧…電気回路を流れる電流や電圧、抵抗値などを計測
・流量計測…液体や気体、蒸気が流れる量を計測 数値から機器異常判断やエネルギー損失(無駄の見える化)指標にも使われます
・荷重計測…荷重や力の大きさである物理量を計測
工業計器の特徴と現状
製品の品質や、働く人の安全に直結する工業計器は、用途に合わせた特徴があります。また、多くの製造現場で自動化が進む一方、工業計器を使った計測に関しては、作業員の目視や手書きの記録といったアナログ対応が未だ多く見受けられます。
- 高い計測精度が必要
評価試験、量産設備前段階では条件出しの為 緻密測定が比較的多いです。ただ量産工程ではアナログ計器による管理/設置にシフトすることも多く 量産工程=高精度とは一概に言えません。
設計や生産の現場では、製品の性能試験や計量の目的でさまざまな物理量が計測され、そこで用いられるセンサー・計測器には高い精度が求められます。
- 計測環境も大切
温度や湿度などが通常の環境とは違う現場では、工業計器そのものに負荷がかかってしまうため、計測環境に対応する計器で測定する必要があります。
- 校正によるメンテナンス
工業計器は使用している内に差異が生じてくるため、定期的に標準器の値と比較、計測器の器差を確認する「校正」作業が必要となります。
- 規格の厳格化への対応
グローバル化にともない、準拠すべき規格や基準は国内のみならず、海外にまで目を向けなければいけません。各業界においても規格厳格化にともない、工業計器の見直しや、新たに計測管理が必要になるケースもあります。
- 省人化への対応
少子高齢化が進む中、人手不足が課題となっています。ロボットなどの自動化設備の導入によるファクトリーオートメーションなどが進む一方、計器確認・データの記録など未だ人力で行っているシーンが少なくありません。計器類に関してもデジタル移行が進んでいない現状があります。
2.工業計器の“見える化”とは?
このように工業計器は、工場の安全管理や品質管理、オートメーション化に欠かせないものでありながらも、ものづくりに直結する生産機械よりも更新が遅れている現状があります。さまざまな業界の、ものづくりの現場を見てきたオザワ科学では、工業計器の更新による“見える化”を推奨しています。
工業計器の“見える化”とは、IoTやセンサー、小型化した計器などを活用することで、現場で「見えないもの」「わからないもの」を見えるようにし、品質管理の向上、工数低減、省人化、製品改良、無駄の削減につなげることです。
下記にオザワ科学でご提案した工業計器の“見える化”の例をご紹介します。
<“見える化”“省人化”の例>
◯ 熱画像カメラによる測定管理システム
製品の品質を左右する温度。作業員の感覚やハンディ温度計での計測では、作業負荷が大きいうえ、計測値にバラつきが生じます。そこに熱画像カメラを導入することで、温度状況を数値と視覚で把握できるだけではなく、常時監視、アプリケーションの併用により、現場から離れた場所での集中管理や製品の合否判定も可能に。
◯ 未測定箇所の管理見直し
近年、工業計器の性能向上により今まで測定できなかった箇所の管理が可能となっています。品質向上・安全管理の面からも、未測定箇所の測定ニーズは高まっています。
◯ 記録のデジタル化
センサーで計測した情報は、記録計(レコーダー)などにつないで表示/記録する必要がありますが、紙ベースの記録計も未だ少なくありません。近年は電子媒体での記録も広がっており、紙からデジタルに切り替えることで、データの共有や分析が容易になります。クラウド機能付きモデルなども登場し、タブレット、携帯端末から場所を問わずデータの確認ができます。
◯ 校正作業の社内対応
定期的に行う校正や不具合/値がおかしくなった際、温度センサーや圧力計などの校正業務を外部に依頼しているケースから、社内対応していこうとする流れもあります。
基準器となる校正器を導入し、リアルタイム対応・校正依頼費用の削減メリットを生んでいます。
近年ではコンパクト/高精度/多機能なコントロールモデルも登場し、熟練操作が不要・処理スピードが速く作業効率(時短)など時代ニーズに合った製品も数多く登場しています。
3.“見える化”につながる代表的な工業計器
ここではオザワ科学が取り扱う、“見える化”につながる工業計器をご紹介します。
小型熱画像カメラ 品質管理システム
品質を左右する温度を、目視や触覚に頼らず小型熱画像により計測することで、品質管理向上や工数低減につなげるシステムです。小型熱画像カメラとグラフィックレコーダー、PCなどと組み合わせ、集中管理や二重監視を実現します。
小型熱画像カメラ 品質管理システムの代表的なものとしては、チノーの「小型熱画像センサー TP」や「グラフィックレコーダー KRシリーズ」などの組み合わせや、オンライン監視計測や検査など処理能力の高いCPA-Lシリーズなどがあります。
産業用音響カメラ
配管/設備などのリーク(漏れ)チェックでは、リーク部から漏れてくる音やリークディテクタ等で確認をするのが一般的です。人の感覚、手間のかかる測定手法など特定に時間がかかる、どこが漏れているか特定できない課題は解消されていません。産業用音響カメラは、リークや放電状態の際に生じる超音波を検出、可視化します。
産業用音響カメラの代表的なものとしては、フリアーシステムズの「Si124シリーズ」があります。124個のマイクにより周辺ノイズに埋もれてしまう少量の漏れも検出。ハンディタイプのカメラのディスプレイ上で、リアルタイムにエアリークや部分放電などを確認できます。最大130mの遠距離からも測定できるため、高所・広域エリアを画面チェックするだけでリーク箇所を検知し、特定のリーク周波数をマシンラーニングしているため、騒音環境下でも微少レベルまでとらえ表示します。
測定の容易さ・稼働状態での検知が可能な為、作業効率も軽減できる“見える化”アイテムです。
ポータブル型校正器
工業計器の校正は、計器ごとに標準器と比べる必要があり、持ち運びの手間もあります。ポータブル型の校正器は、電気や周波数、温度、圧力などの校正を1台でまとめたオールインワンモデルのため、コストパフォーマンスの向上や作業性向上が期待できます。
ポータブル型圧力校正器の代表的なものとしては、日本ベーカーヒューズの「DPI610Eシリーズ」「DPI620Gシリーズ」があります。空圧タイプと油圧タイプがあり、圧力センサー内蔵、電気(電流・電圧)、圧力の発生と測定機能を搭載したDPI610シリーズ、最大100MPaまでの圧力発生を可能とする圧力発生ベース、圧力計測をはじめ電気信号と温度の計測と発生を行う多機能校正器、デジタル補正された圧力センサモジュールの3要素から構成されるDPI620シリーズなど校正圧力条件や使用する場所によって選択できます
集録・監視パッケージシステム
工業計器の進化の先にあるのが、工場内の機械・設備とシステムがネットワークでつながり、製造ラインの動向や稼働状況がリアルタイムで“見える化”されている「スマートファクトリー」です。
スマートファクトリー化を支える集録・監視パッケージシステムの代表的なものとしては、チノーの「CISAS/V4」があります。各種装置・設備など最大500タグのデータをパソコンで集録・監視するパッケージシステムで、豊富な監視画面を活用したセキュリティ機能、ユーティリティ機能、帳票機能を搭載しています。
近年では電力量、熱中症指数(WBGT)といった様々なデータ管理と合わせての提案も増えています。
CISAS/V4を利用した、チノー藤岡事業所の見える化デモはこちら
4.まとめ
ものづくりに欠かせないものでありながら、生産設備と比較するとアナログな部分が未だ残る工業計器。グローバル化、少子高齢化といった時代の流れに対応するためには、“見える化”“省人化”を意識した更新が鍵になります。
とはいえ、業界や企業によってものづくりの現場は千差万別であるため、大きな時代の潮流とともに、現場が抱えている課題を拾い上げ、それらをともに解決するソリューションが必要になります。
オザワ科学では専任の担当者によるヒヤリングや、現場視察から真の課題解決につながる“見える化”“省人化”をご提案しています。工業計器の更新/ご相談から、工場全体のスマートファクトリー課題まで、お気軽にご相談ください。