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物質を構成している微細な「粒」の大きさや、分布、形状を調べ、製品開発に活用する粒子分析。製品の品質や性能に影響を与える重要な指標であり、さまざまな産業で欠かせません。なかでも機能性ポリマーなどの材料開発、リチウムイオン電池などの電子部品、医療・創薬などの生命科学分野などで重要性が増しています。
粒子分析にはさまざまな手法があり、理解した上で最適な分析装置を導入する必要があります。また、すでに粒子分析装置をお持ちの場合でも、最新の機種にリプレイスすることで、分析の簡便化・迅速化につなげることが可能です。
オザワ科学では、ナノサイズからミリサイズまで対応するさまざまな粒子分析装置を取り揃え、万全なアフターフォローを含めお客様の研究・開発をサポートしています。

Index 目次

    1.粒子分析とは?

    「粒子」とは、物を形づくる小さな粒のこと。砂のように目に見えるサイズの粒子から、ナノテクノロジーを支える1nm(1mmの100万分の1)程度の粒子まで幅広く存在しています。

    世の中のさまざまな製品は、粒子や粉体の状態を経て完成品となります。食品や薬品、化粧品のように粉体のまま製品となるものもありますが、粉体を経て液体になるもの(塗料など)、粉体から圧縮や化学変化を経て固体となるもの(ガラス、電池など)も。粒子や粉体はその後の特性に影響を与えるため、分析を経て状態を知ることはとても重要と言えるでしょう。

    粒子分析は「粒子計測」とも呼ばれ、粒子の大きさである「粒子径」を調べるもの、粒子の割合や量「粒度分布」を確認するもの、映像で粒子の形や混入状態を知る画像解析などがあります。

    • 粒子径

    真球であれば直径で大きさを示すことができますが、複雑な形をした粒子を数値で示すと、膨大な情報量となります。そこで、すべての粒子を球体と仮定し、同一の体積の球に換算したときの直径「球相当径」が値として使われます。その粒子と同体積をもつ球の直径で粒子の大きさを換算した「等体積球相当径」、同じ表面積をもつ球の直径で換算した「等表面積球相当径」、同じ沈降速度(密度)の球の直径で換算した「等沈降速度球相当径」などがあります。

    • 粒度分布

    測定対象の粒子群の中に、「どのような粒子径の粒子が、どれぐらいの割合で含まれているか」を示す指標。一般的に、横軸を粒度(粒子径)、縦軸を個数や体積などのヒストグラムで分布状況を確認します。ヒストグラム上に山が複数ある場合は、サイズの異なる粒子が混在していることがわかります。

    粒子分析の種類

    粒子分析は、粒子の大きさや種類、調査目的により、さまざまな方法から選択されます。ここでは代表的な分析方法を紹介します。

    ●ふるい法

    径の大きさが少しずつ異なるふるいを小さなものから順に上に重ね、試料を上から流し振るうことで、粒子を分類し測定する方法。必要な投資費用が少なく、短時間で正確な結果が得られることから、時代を超えて活用されている方法です。

    試験用ふるいの規格は、JIS Z 8801-1:2019及びJIS Z 8801-2:2022に記載されています。

     

    ●レーザー回折/散乱法

    粒子群にレーザー光を当て、前後・上下・左右などさまざまな方向から発せられる回折・散乱光を観測することで、粒子径や粒度分布を知る方法。操作が容易で短時間で測定可能であること、幅広いレンジの粒子を分析できる、再現性が高い、といった特長があります。レーザー回折/散乱法を使った装置としては堀場製作所のLA-960シリーズのような粒度分布測定装置(図1)が代表的でありますが、複数の粒子が混ざった状態から個別の状況を知る場合、他の分析方法が適していることもあります。

    この手法は一般的に0.1μm~3mm程度の粒子径で使用されますが、特別な機器及び条件で測定可能な範囲が0.1μm以下、3mm以上に拡張が可能です。

    簡便な反面、アスペクト比が高いサンプルではレーザーが当たった面で測定した粒子径にて球状粒子を仮定する為、沈降法、ふるいなどの物理的な原理に基づく測定法の粒度分布とは異なります。

    現在はお客様のサンプルの多様化に合わせ、水や有機溶媒で分散させるフローセルタイプや粉体の状態で測定可能な乾式ユニットに加え、メーカーそれぞれのオプションが用意されています。

    最近はナノ粒子も増えており、凝集しやすいサンプルを希釈せずそのまま測定セルに封入し測定できる高濃度低粘度セルユニット(図2)や、希少サンプルを最小容量5mlで測定可能なバッチ式セルユニット(図3)も注目されています。
    ※画像はいずれも堀場製作所LA-960シリーズのオプション製品。

    レーザー回折・散乱法は、JIS Z 8825:2013に記載されています。

     

    ●遠心沈降法

    粒子群に遠心力を加え、媒体中を移動・落下する粒子の速度(沈降速度)から粒子径を求める方法。媒体に液体を用いる場合は「液相沈降法」とも呼ばれます。粒子を分級(大きさでのグループ分け)しながら測定を行うため、非常に高い分解能を誇ります。

    沈降法自体は歴史的に古い測定原理ですが、近年急激に技術革新が行われ、見直されている測定方式です。

    複数ピークや複雑な分布形状を持つ試料、混合物などの詳細な粒度分布を得るのに適しており、ナノ粒子まで短時間で測定できます。粒子と溶媒の密度差が小さい場合、上限が数百μmまで測定できる反面、小さい粒子の測定に時間が掛かり、1つの試料を測定するのに1日以上かかることもあります。

    液相遠心沈降法は、JIS Z 8823-2:2016に記載されています。

     

    ●粒子軌跡解析法(パーティクルトラッキング法/PTA法)

    溶媒中に浮遊する微粒子は不規則に動いており、この現象は「ブラウン運動」と呼ばれます。バーティクルトラッキング法では、粒子にレーザーを照射したときの散乱光から、各粒子のブラウン運動をCCDカメラやCMOSカメラで時間経過に応じた連続的な変化(軌跡)を画像として記録。拡散速度から粒子径と個数を計算します。高い分解能を求めるときや、粒子の定量観察が必要なときに適した分析方法です。

    例えば濃度が低く、レーザー回折・散乱式や動的光散乱式では検出しにくいナノバブル等のサンプルは前処理なしで測定可能ですし、タンパク質凝集体の定量評価や蛍光標識することで特定のエクソソームの粒子径計測もできます。

    ナノ粒子トラッキング解析(NTA)法という用語が歴史的にPTA法を表すために使用されることもありますが、PTA法はより広い範囲の粒子径をカバーするため、NTA法はPTA法の一部ともいえます。

    PTA法はナノ粒子を1粒ずつ観察できる非常に感度が高い分析手法であるがゆえに、残留物等のコンタミネーションがあるとそれもカウントされてしまい、測定結果に影響を及ぼす為、装置の使用中だけでなく、保管時にも測定領域を清浄に保つ必要があります。

    PTA法は、JIS Z 8829:2021に記載されています。

     

    ●動的光散乱法(DLS法)※DLS:Dynamic Light Scattering

    パーティクルトラッキング法同様、粒子のブラウン運動からナノオーダーの粒子径を得る手法ですが、動的光散乱法は粒子がブラウン運動により移動するときに散乱する光の強度の時間的変動を測定します。この変動から粒子の拡散係数を計算し、ストークスーアインシュタイン方程式を用いて粒子のサイズを決定します。

    レーザー回析・散乱法ではMie散乱から粒子径を算出していますが、粒子径が小さい場合、Mie(ミー)散乱ではなく散乱が同じ方向になるRayleigh(レイリー)散乱になり、粒子径の算出が困難です。

    【Mie散乱とRayleigh散乱の違いとは?】

    DLS法はとても実用的で簡便な手法であるため、様々な最先端の製品開発、基礎研究等で使用されています。ナノ粒子の粒度分布測定に適した分析方法です。

    サンプリング操作も容易で、比較的広い粒子径範囲かつ低濃度でも高濃度でも測定できますが、あまり濃度が高いと多重散乱を起こし、結果が不正確になることがあります。

    また、異なるサイズの粒子が混在する場合は大きい粒子の影響を強く受け、小さい粒子の情報を隠してしまう点があるため、粒子サイズがある程度均一であることが望ましい分析手法です。

    DLS法はJIS Z 8828:2019に記載されています。

    2.画像による粒子解析

    最近では凝集しやすい粉体を扱うアプリケーションも増えており、上手く分散しないサンプルや、アスペクト比が高いサンプル(真球ではなく形がいびつだったり、繊維状だったりする)の場合、レーザー光がどの面で当たったのかによって粒度分布にズレが生じます。SEM(走査型電子顕微鏡)等で取得した画像を画像解析ソフトにて、より真値に近い粒子径情報を得たいと思われる方も多いことでしょう。ここからは、そういったご要望を満たす製品やシステムをご紹介します。

    ●SEM(走査型電子顕微鏡)

    SEMとは、測定対象物に電子線を当て、試料から出てくる電子の情報を頼りに、試料の表面状況を低倍率から高倍率まで連続的に観察できる顕微鏡です。粒子分析において画像観察の重要性が高い場合は、SEMも併用して使うのが一般的です。

    日立ハイテク:TM4000Ⅱシリーズ

    SEMの代表的なものとしては、日立ハイテクの「TM4000Ⅱシリーズ」があります。装置の小型化と、操作の簡易化を追求した機種で、目的のデータをすばやく取得できます。通常、SEMでは絶縁物試料を観察する場合、電子が試料表面に蓄積されて帯電するため、正常な観察ができなくなりますが、低真空観察法を採用した本機では前処理なしで観察できるのも特長です。

    ⇒SEMについては、異物分析装置のコラムもご参照ください。

     

    ●AI画像解析ソフトウェア

    粒子の観察・分析でよく使用されるSEM画像を、一般的な画像解析ソフトウェアで粒子解析を実施してみると、粒子の境界線を認識しやすくするための「二値化」が極めて困難であるため、あきらめる、もしくはSEM画像をプリントアウトして1粒ずつノギス等のスケールを用いて粒子径を求める作業をされている方も多くいらっしゃいます。

    【二値化とは?】
     グレースケールで表された画像を黒(0)、白(1)で表示させることで、対象物の境界線が明確になり画像分析ができるようになります。

    最近はSEMやTEM(透過型電子顕微鏡)で得た粒子画像をAIで画像解析ができるソフトウェアも登場し、凝集したナノスケールのサンプルも解析業務効率が飛躍的に改善されています。

    下図はSEM画像を画像処理ソフトで解析した例です。オザワ科学では、こうしたAI画像解析ソフトウェアもご提案が可能です。

    3.まとめ

    粒子分析はさまざまな産業で欠かせないだけあって、多くのお客様がすでに分析装置をお持ちのことでしょう。そんな中、オザワ科学ではアフターサポート課による導入後のサポートや、メーカーと連携したセミナー開催など製品導入後も安心してご使用いただける環境があることが強みです。また販売代理店として初めて堀場製作所のメンテナンスライセンスを取得しており、お客様の機器メンテナンス・更新にスムーズに対応することができます。

    測定ニーズからある程度の分析装置は絞り込めたとしても、それで終わりではありません。よりお客様の分析を高精度かつスムーズに行うために、SEMだけでなく画像解析ソフトでの自動解析手法も含めたトータル提案ができることも、科学機器総合商社であるオザワ科学の強みです

    専門ライセンスを有し、メーカーにも精通したオザワ科学に粒子分析についてもお気軽にご相談ください。

    この記事に関する取扱メーカー

    堀場製作所 日立ハイテク

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