Share

製品や部品、材料を、実際に使用される環境を想定した条件下にて、劣化や動作状況を確認する環境試験。近年のグローバル化にともない、準拠すべき規格やメーカー基準について国内のみならず、海外にまで目を向けなければいけない状況です。

環境試験では、製品の種類ごとに必要とされる装置が異なるばかりか、費用対効果を満たすこと、長期にわたり問題なく試験が行えること、環境に配慮した試験を行うことなど、試験装置に求められる条件がとても複雑です。オザワ科学ではお客様のミッションを深く理解した上で、製品の品質と信頼を担保するためのさまざまな環境試験装置を提案し、それらを組み合わせながら、最適な試験環境づくりもサポートいたします。

Index 目次

    1.環境試験とは?

    環境試験は、さまざまな環境条件を人工的に作り出し、そこで製品や部品、材料に起こる変化や耐久性を確認する試験です。近年は自動車のEV化に伴い電子部品やバッテリーの試験需要が高まり、製品が仕様を満たしているか確認をするためにも、必ず環境試験が行われます。

    とくに工業分野ではグローバル化が進み、対応すべき「規格」が複数存在します。環境試験は、規格を満たし、製品の品質と信頼を担保するためにも欠かすことができません。

    規格の種類

    工業分野では標準化を進めるため各種の規格が制定されており、大きく「国際規格」「各国規格」「業界(団体)規格」に分けることができます。

    • 国際規格

    国際標準化団体が策定した規格で、国際標準とも呼ばれます。製品の品質、性能、安全性、寸法、試験方法などに関して国際的な取り決めがされています。

    電気分野以外の国際標準である「国際標準化機構(ISO)」と、電気分野の国際標準である「国際電気標準会議(IEC)」などがあります。

    • 各国規格

    国ごとに定めた規格で、国際的な団体や機関で定めたものをそのまま適用しているケースも少なくありません。日本の「日本工業規格(JIS)」、中国の「中国国家標準(GB)」、韓国の「韓国産業規格(KS)」、ヨーロッパの「欧州規格(EN)」、アメリカの「米国規格協会(ANSI)」などがあります。

    • 業界(団体)規格

    特定の業界や団体が定めた規格。団体規格には、省庁や業界、会社、工場の水準で決められて使われる規格も含まれます。電気・電子・コンピュータなどの規格である「電気電子技術者協会(IEEE)規格」や、公益社団法人自動車技術会が定める「日本自動車技術会規格(JASO)」など、業界・団体ごとにさまざまな規格があります。

    • その他規格

    企業が自社で定めた規格。品質管理や技術水準の向上、信頼性のアピールなどに活用されます。

    環境試験の種類

    続いて、一般的な環境試験についてピックアップしてご紹介します。

    ●温度・湿度試験

    試験機の中で温度や湿度を変化させ、製品や部品、材料が受けるストレスの影響を調査することで、信頼性を評価します。材料開発の際に、温度差による熱膨張の影響を調べることも。

    また、電子部品では製品が熱を持つことがあるため、温度と湿度を組み合わせた試験がよく実施されます。

    ●恒温・恒湿試験

    「恒温器(恒温槽)」や「恒湿器(恒湿槽)」と呼ばれる試験装置の中で、長期間にわたって温度・湿度試験を実施。短期間では確認できない製品や部品、材料の変化を確認します。

    ●耐候試験

    太陽光に含まれる紫外線は、高分子材料を劣化させる要因として知られています。また、雨に含まれている酸もさまざまな影響を与えます。耐候試験は太陽光や降雨などの条件を人工的に再現し、製品や部品、材料の変化を調べます。

    ●腐食試験

    製品や部品、材料が置かれる環境の腐食因子を特定し、それらを組み合わせながら変化を測定します。塩水の噴霧や特定のガスを発生させて金属の錆の状況を見るなど、さまざまな方法があります。

    環境試験の流れ

    ここでは環境試験の大まかな流れを紹介します。

    • 1.適用規格や試験条件の精査

    製品、部品、材料に対してどのような規格に準拠させたいかを確認し、そのために必要となる環境試験について検討します。

    • 2.供試品の準備

    環境試験にかける供試品のコンディションや必要数量を検討し、決定します。供試品の製造仕様や条件が、試験前と試験後の量産時で異ならないよう注意が必要です。 

    • 3.試験装置の手配/環境試験受託企業へ依頼

    環境試験に必要となる試験装置を手配します。装置によっては設置条件が定められていたり、給排水やダクトの接続が必要であったりするため、専門のディーラーに相談することをおすすめします。

    また、頻度の少ない試験の場合は試験装置のレンタルや、環境試験受託企業へアウトソーシングすることも可能です。

    • 4.環境試験の実施

    予定された環境試験を実施します。試験によっては数ヶ月を要するものもあるため、途中で装置が止まっていないか、正しい試験が行われているか確認する必要があります。

    • 5.試験結果のレポーティング

    必要な様式に沿って試験結果をまとめます。

    2.環境試験に使われる代表的な装置

    これまでの記事でご紹介したように、環境試験といってもその内容はバラエティに富んでいます。試験内容の数だけ環境試験の装置が存在する中、ここではオザワ科学へのご用命が多い環境試験装置をピックアップしました。

    多くのお客様で導入実績がある装置ですので、ぜひご参考にしてください。

    低温恒温(恒湿)器・恒温恒湿器

    プラチナスJシリーズ:エスペック

    温度・湿度試験、恒温・恒湿試験に対応する試験装置です。槽の中で温度や湿度を変化させたり、長期間にわたって高低温、高低湿の環境負荷をかけたりできます。装置によって温度や湿度範囲、昇温時間や冷却時間が異なるため、試験で必要な負荷に対応する装置を選ばなければいけません。また、水を使用する装置では長期に渡る連続運転で水の補給と排水のルートが必要となります。その場合は、給水タンクとともに、水供給側との直接接続ができる機能や、漏水検知システムなどがあると便利・安全です。

    低温恒温(恒湿)器・恒温恒湿器の代表的なものとしては、エスペックの「プラチナスJシリーズ」があります。エネルギー消費を最小限に抑えながら、多言語表示対応のカラーパネル、遠隔からのモニタリングや運転操作など高い性能を実現。環境試験の内容に沿ってカスタマイズできる汎用性でも評価を得ています。

    耐候性試験機

    スーパーキセノンウェザーメーター:スガ試験機

     

    日光や雨雪、温度や湿度、オゾンによる影響などを調べる耐候試験は、屋外での実施となると結果が出るまでに時間がかかるうえ、同一環境を保持する難しさもあります。耐候試験装置は、屋外環境を再現しながら、機械により負荷を増幅させることで、屋外よりも短期間で試験を終えることが可能になります。

    耐候試験装置の代表的なものとしては、スガ試験機の「スーパーキセノンウェザーメーター」があります。本機は自動車部品や塗料・建材メーカーを筆頭に多くの材料に対する、耐候性を評価する試験装置です。キセノンランプにより太陽光の紫外部の約3倍の光照射を可能とするほか、純水や過酸化水素水をスプレーする機能があり、屋外試験に比べ約100倍以上の促進性で評価を行うことができます。

    3.環境試験装置の導入ポイント

    環境試験は繰り返し、長期にわたり負荷をかけるものであるため、導入にあたっては他の分析装置とは異なる留意点があります。オザワ科学ではこれまで、多くのお客様の環境試験をサポートしてまいりましたが、その経験から「導入ポイント」を以下にまとめます。

    <導入時のポイント>

    • 付帯工事の有無

    試験装置によっては、給排水やダクトの接続が必要であり、壁に穴を空ける付帯工事が発生することもあります。また、付帯工事にともなってアスベスト分析 が必要になることがあるため、環境試験の仕様が策定されたら早めにディーラーにご相談ください。

    アスベスト分析については、こちらのコラム もご参照ください。

    • モニタリング機能やアラート機能の有無

    数ヶ月や1年単位で実施されることもある環境試験。何らかのトラブルにより途中で試験が止まってしまったら、再び一からやり直しになってしまい、大きな機会損失となります。そのようなエラーを防ぐため、遠隔で装置の稼働状況をモニタリングできる機能や、不具合を感知して知らせるアラート機能、リマインダー機能などで備える方法もあります。

    • 環境への配慮

    低温環境を作り出す装置で冷媒としてフロン系のガスが使われたり、温度試験時の排熱により消費エネルギーが増えたりすることがあるため、試験においては環境への配慮が欠かせません。近年は代替フロンを採用するなど、環境に配慮した装置がリリースされているため、有効な選択肢となります。

    • 最新機で高まるメンテナンス性

    環境試験装置は10〜15年と長期で使用するケースが少なくありません。古い機種では修理に時間を要し、故障部品は代替品が必要になる等、メンテナンスが大変な場合も

    最新機の多くでメンテナンス性が高まっているため、すでに装置を導入済みの場合でも、買い替えによってメンテナンスコストを下げられることがあります。

    • 購入かレンタルか

    高額な装置の導入に迷われている場合は、レンタル装置を利用して環境試験を行い、機能や使い勝手を把握した上で購入に進むという方法もあります。

    他にも、各受託試験所への試験委託も選択肢のひとつです。

    4.まとめ

    環境試験装置は種類が多いばかりか、同じ装置であってもお客様や製品によってカスタマイズをしたり、装置を組み合わせたりしながら、最適な試験環境を作り上げる必要があります。

    オザワ科学では単に装置を納めるだけではなく、「お客さまが本当に必要とする環境試験は何か」「試験機はもちろん、試験前後の結果を把握するための装置の提案」「時代の潮流をとらえた最新の試験方法」など、科学機器総合商社の強みを活かしたトータルソリューションのご提案をしています。

    また、装置や設置環境によって必要とされる付帯工事の知見も蓄えられており、工事業者のご紹介も可能です。レンタルをした上で装置を購入されたい場合もお気軽にご相談ください。

    環境試験は日本のものづくりを支える大切な工程です。スムーズで精度の高い試験環境づくりに、ぜひ伴走させてください。

    この記事に関する取扱メーカー

    エスペック スガ試験機

    CATEGORY

    TAG

    SEMINAR